『賀茂』の言葉と地名(「能を楽しむ勉強会」序)

勉強会(能『賀茂』)

名称 「能を楽しむ勉強会」『賀茂』
主催 早稲田大学観世会
参加者 非公開
会場 Skype
時間 18:30~19:00

 

室津から下鴨神社へ

・室の明神

兵庫県たつの市御津町室津にある賀茂神社のこと。

・都の神

上賀茂神社と下鴨神社のこと。
実際に訪れているのは、下鴨神社か。

・飾磨

兵庫県姫路市飾磨区。染料の原産地として有名で、
「藍」や「褐(かち)」などの語とともに歌われる。
「飾磨の市」、「飾磨の里」など。
〈参考〉
頼まずは飾磨の褐の色を見よ逢ひ初めてこそ深くなりぬれ
(新古今集・雑歌・俊成)

・播磨潟室のとぼそもあけぼのに

「播磨潟」に続く「室の門」とは、室津の港のこと。
但し、「室の樞(とぼそ)」と言う時、
「室」は地名ではなく、貴人の住居に使う「御室」のように、部屋のこと。

下鴨神社にて

・御手洗(みたらし)

御手洗川。上賀茂神社辺りを流れる鴨川の支流に、
同名の川があるが、この曲の舞台は糺の森・下鴨神社
と考えられるので、それとは異なる。現在は、この
御手洗川で斎院代の禊ぎが行われる。

・もちがお
『新潮日本古典集成』は「望顔」、
『日本古典文学全集』は「持顔」とする。

・よるべの水
神前に供える水のこと。

・初音ふり行くほととぎす
〈参考〉
待つことは初音までかと思ひしに聞きふるされぬほととぎすかな
(続千載集・夏・254・西行法師)

・隔てはあらじ何事も心からにて澄むも濁るも〈…〉

『阿漕』の次のような詞章を思わせる。
構成上の位置も一致している。

「げにや名所旧跡に。馴れて年経ば心なき。海士の焚く藻の夕煙。身を焚くべきにはあらねども。住めば所による波の。音も変わるか。聞き給え。物の名も。所によりて変わりけり。所によりて変わりけり。難波の蘆の浦風も。ここには伊勢の浜荻の。音を変えて聞き給え。藻塩焼く。煙も今は絶えにけり。月見んとての。海士の仕業にと。許され申す海士衣。しきしまに寄り来る。ひとなみにいかで洩るべき。」

・石川や瀬見の小川の清ければ月も流れを尋ねてぞ澄む

鴨長明の歌。

以下、鴨川・貴船川・戸奈瀬・清瀧川・大堰川・音羽川の名高い景色が、豊富な掛詞とともに連続して謡われる。
・貴船川
鞍馬川と合流した後に鴨川上流に流れ込む。
〈参考〉
おく山にたきりて落つる滝つ瀬の玉ちるはかりものな思ひそ
(後拾遺・神祇・1163)
これは和泉式部の歌(同・1162)への貴船神の返歌と、詞書に伝わる。
「玉ちる」という言葉は、急流だけでなく、露の形容にも使われるが、この歌の影響を思わせる歌がいくつか残されている。
・大堰川
桂川の上流の名で、範囲は諸説あるが、
ここでは、渡月橋から清滝川合流点辺り。
桂川は下流で鴨川と合流し、淀川へと続く。
〈参考〉
水もなく見えこそわたれ大井河きしのもみちは雨とふれとも
(後拾遺・秋・365・中納言定頼)
・戸奈瀬
大堰川の急流。或いは、その付近の滝。
〈参考〉
大井河ちちるもみちはにうつもれて戸なせの滝は音のみそする
(金葉・秋・269・大中臣公長)
秋ふかみとなせに滝つもみちはは名に立つ山の嵐なりけり
(続後撰・秋・437・藤原有家)
となせ川音には滝と聞きつれとみれは紅葉の淵にそありける
(続古今・冬・567・堀川左大臣)
・清滝川
桟敷ヶ岳と飯森山を水源とする。
桟敷ヶ岳は、鴨川の水源の一つ。
戸奈瀬の辺りで桂川と合流する。
〈参考〉
石はしる水の白玉数見えて清滝川にすめる月影
(千載・秋・283・俊成)
降つみしたかねのみ雪とけにけり清滝川の水のしらなみ
(新古今・春・27・西行法師)
・音羽川
比叡山から発する高野川の支流。
高野川は下鴨神社の辺りで鴨川と合流する。
逢坂の西の音羽山から発する山科川ではない。
〈参考〉
落ちたきつ滝のみなかみ年つもり老にけらしなくろきすちなし
(古今・雜・928・壬生忠岑)


・水掬ぶ
〈参考〉
結ふ手のしつくににこる山の井のあかても人にわかれぬる哉
(古今・離別・404・紀貫之)

・むすぶの神
〈参考〉
君見ればむすぶの神ぞうらめしきつれなき人をなにつくりけん
(拾遺・雜恋・不知)

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